5.1.3 スパニングツリーと高速スパニングツリー
PVST+,シングルスパニングツリーにはIEEE802.1DのスパニングツリーとIEEE802.1wの高速スパニングツリーの2種類があります。それぞれ,PVST+とRapid PVST+,STPとRapid STPと呼びます。
スパニングツリープロトコルのトポロジ計算は,通信経路を変更する際にいったんポートを通信不可状態(Blocking状態)にしてから複数の状態を遷移して通信可能状態(Forwarding状態)になります。IEEE 802.1Dのスパニングツリーはこの状態遷移でタイマによる状態遷移をするため,通信可能となるまでに一定の時間が掛かります。IEEE 802.1wの高速スパニングツリーはこの状態遷移でタイマによる待ち時間を省略して高速な状態遷移をすることで,トポロジ変更によって通信が途絶える時間を最小限にします。
なお,マルチプルスパニングツリーはIEEE802.1sとして規格化されたもので,状態遷移の時間はIEEE802.1wと同等です。それぞれのプロトコルの状態遷移とそれに必要な時間を次に示します。
| 状態 | 状態の概要 | 次の状態への遷移 | 
|---|---|---|
| Disable | ポートが使用できない状態です。使用可能となると,すぐにBlockingに遷移します。 | − | 
| Blocking | 通信不可の状態で,MACアドレス学習もしません。リンクアップ直後またはトポロジが安定してBlockingになるポートもこの状態になります。 | 20秒(変更可能)またはBPDUを受信 | 
| Listening | 通信不可の状態で,MACアドレス学習もしません。該当ポートがLearningになる前に,トポロジが安定するまで待つ期間です。 | 15秒(変更可能) | 
| Learning | 通信不可の状態です。しかし,MACアドレス学習はします。該当ポートがForwardingになる前に,事前にMACアドレス学習をする期間です。 | 15秒(変更可能) | 
| Forwarding | 通信可能の状態です。トポロジが安定した状態です。 | − | 
(凡例)−:該当なし
| 状態 | 状態の概要 | 次の状態への遷移 | 
|---|---|---|
| Disable | ポートが使用できない状態です。使用可能となると,すぐにDiscardingに遷移します。 | − | 
| Discarding | 通信不可の状態で,MACアドレス学習もしません。該当ポートがLearningになる前に,トポロジが安定するまで待つ期間です。 | 省略または15秒(変更可能) | 
| Learning | 通信不可の状態です。しかし,MACアドレス学習はします。該当ポートがForwardingになる前に,事前にMACアドレス学習をする期間です。 | 省略または15秒(変更可能) | 
| Forwarding | 通信可能の状態です。トポロジが安定した状態です。 | − | 
(凡例)−:該当なし
Rapid PVST+,Rapid STPでは,対向装置からのBPDU受信によってDiscardingとLearning状態を省略します。この省略によって,高速なトポロジ変更をします。
高速スパニングツリーを使用する際は,次の条件に従って設定してください。条件を満たさない場合,Discarding,Learningを省略しないで高速な状態遷移をしないことがあります。
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               トポロジの全体を同じプロトコル(Rapid PVST+またはRapid STP)で構築する(Rapid PVST+とRapid STPの相互接続は,「5.3.2 アクセスポートのPVST+」を参照してください)。 
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               スパニングツリーが動作する装置間はPoint-to-Point接続する。 
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               スパニングツリーが動作する装置を接続しないポートではPortFastを設定する。