20.1.2 情報の配布
RAによるアドレス配布には,ルータからの定期的な配布と,端末からのリクエストに対するルータの応答の二種類があります。両者は配布の契機が異なるだけで,どちらの場合も,ルータからのアドレス配布はICMPv6パケットType 134で規定されたRAによって行われます。また,端末からのリクエストはICMPv6パケットType133 のRS(Router Solicitation)によって行われます。
RAを受信した端末は,与えられたプレフィックスと各端末で固有である64ビットのインタフェースID(通常は48ビットのMACアドレスを基に生成)を組み合わせたグローバルアドレスを生成し,RAを受信したインタフェースに設定します。同時にRA送信元アドレス(=RAを送信したルータのインタフェースリンクローカルアドレス)を端末のデフォルトゲートウェイとして設定します。MACアドレスからのインタフェースID生成を次の図に示します。
|
ルータから端末に伝えられるプレフィックスは,通常はRAを広告するインタフェースに設定されたアドレスプレフィックスのうち,リンクローカルを除いたものです。ただし,それに加えてそのほかのプレフィックスを広告することもできます。また,ルータからのRA送出時間間隔の最大値,最小値をインタフェース単位で設定できます。RAで配布される情報を次の表に示します。
配布情報 |
説明 |
設定できる範囲 |
省略時の初期値 |
---|---|---|---|
アドレス自動管理設定フラグ(ManagedFlag) |
RA以外の方法(DHCPv6など)によるIPv6アドレス設定を,RA受信を契機に端末で自動的に行わせることを指定するフラグ。 このフラグの値に関係なく,RAによるアドレス設定は必ず行われます。通常はOFFにしてください。 |
ON/OFF |
OFF |
アドレス以外情報設定フラグ(OtherConfigFlag) |
RA以外の方法(DHCPv6など)によるIPv6アドレス以外の情報(DNSサーバなど)を,RA受信を契機に端末で自動的に行わせることを指定するフラグ。通常はOFFにしてください。 |
ON/OFF |
OFF |
リンクMTU(LinkMTU) |
端末が実際の通信に使用するMTU値を指定します。通常使用されるMTU値はRAを受信したインタフェースのMTU値ですが,インタフェースのMTUいっぱいのパケットを端末に使わせたくない場合に,このパラメータをMTU値よりも小さい値に設定します。インタフェースのMTUよりも大きい値を通知することはできません。 |
0(配布しない),または1280〜インタフェースのMTU |
インタフェースのMTU |
可到達時間(ReachableTime) |
IPv6ではICMPv6によって隣接ノードの到達性を確認しますが,その確認結果の有効期間を端末に指定します。未指定または0を指定した場合は端末ごとに定められたデフォルト値が到達性確認結果の有効期間になります。なお,0以外の値を指定した場合は,本装置の該当インタフェースで学習するNDPエントリのReachable状態遷移時間のベース値にも適用されます。 |
0〜4294967295(ミリ秒) |
0 |
再送時間(RetransTimer) |
IPv6ではICMPv6によって隣接ノードの到達性を確認しますが,そのとき送信するICMPv6パケットの送信間隔を端末に指定します。未指定または0を指定した場合は端末ごとに決められたデフォルト値が再送間隔として使用されます。なお,0以外の値を指定した場合は,本装置の該当インタフェースで学習するNDPエントリの解決処理時および近隣到達不能検出時の再送間隔にも適用されます。 |
0,または1000〜4294967295(ミリ秒) |
0 |
端末ホップリミット(CurHopLimit) |
端末がパケットを送信するときに,何ホップ先まで中継できるかを示すIPv6ヘッダ内のホップリミット領域に設定する値を指定します。 |
0〜255 |
64 |
ルータ生存時間(DefaultLifetime) |
端末がRAによって確定したデフォルトルータの有効期間。0を指定すると,端末は,受信したRAの送信元アドレスをデフォルトゲートウェイとみなしません。 |
0,またはRA送出間隔の最大値〜9000(秒) |
1800(秒) |
リンク層オプション(SourceLink-layerAddressOption) |
RA送信元のIPv6アドレスに対応するリンク層アドレス。本装置の場合は,RA広告インタフェースがイーサネットおよびギガビット・イーサネットの場合だけ,そのポートのMACアドレスが入ります。リンク層アドレスによる負荷分散などを行う場合に,このオプションをOFFにし,各端末でデフォルトゲートウェイのリンク層アドレス解決を行います。 |
ON/OFF |
ON |
ルータ優先度(DefaultRouterPreference) |
端末が複数ルータよりRAを受信した場合に,どのRAの情報を優先して使用するか指定します。 |
high,medium,low |
medium |
プレフィックス(PrefixList) |
RAで広告するプレフィックス。指定していないときは,広告するインタフェースについているリンクローカルではないプレフィックスを広告します。それ以外に,さらにプレフィックスを広告したい場合や,インタフェースについているプレフィックスに対して有効期間を設定する場合に使用します。 |
グローバル,サイトローカルプレフィックス |
インタフェースの非リンクローカルプレフィックス |
自律設定有効フラグ(AutonomousFlag) |
このオプションがOFFのプレフィックスは端末に付与されません。RAの試験運用以外のときは常時ONにしてください。 |
ON/OFF |
ON |
オンリンクフラグ(OnLinkFlag) |
このオプションがOFFのプレフィックスについては,端末でのredirectメッセージの送信が抑制されます。RAの試験運用以外の時は常時ONにしてください。 |
ON/OFF |
ON |
推奨有効期間(PreferredLifetime) |
RAによって通知されたプレフィックスを,端末が通信時のソースアドレスに使用することを許可する時間。推奨する有効期間を過ぎてもRAを受信しないと,該当するプレフィックス以外のアドレスを通信のソースアドレスとして使用することを試行します。ただし,ほかに適切なプレフィックスを持たない場合は,端末は推奨する有効期間を過ぎたプレフィックスを通信に使用します。 |
0,またはRA送出間隔の最大値〜4294967295(秒) |
604800(秒) |
最終有効期間(ValidLifetime) |
RAによって通知されたプレフィックスが消滅するまでの時間。最終有効期間を過ぎてもRAを受信しないと,端末は該当するプレフィックスのアドレスを削除します。 |
0,またはRA送出間隔の最大値〜4294967295(秒) |
2592000(秒) |
DNSサーバ情報(RDNSS) |
端末がDNS解決で使用するDNSサーバのIPv6アドレスを指定します。 |
グローバルアドレスまたはリンクローカルアドレス |
配布しない |
DNSサーバ情報の使用期限(Lifetime) |
RAによって通知されたDNSサーバを使用できる最大時間です。 |
0〜4294967295(秒) |
RA送出間隔の最大値の3倍 |
DNSサーチリスト(DNSSL) |
端末がDNS解決を実行するときに使用するドメイン名を指定します。 |
253文字以内のドメイン名 |
配布しない |
DNSサーチリストの使用期限(Lifetime) |
RAによって通知されたドメイン名を使用できる最大時間です。 |
0〜4294967295(秒) |
RA送出間隔の最大値の3倍 |