コンフィグレーションガイド Vol.1


21.1.3 スパニングツリーと高速スパニングツリー

PVST+,シングルスパニングツリーにはIEEE802.1DのスパニングツリーとIEEE802.1wの高速スパニングツリーの2種類があります。それぞれ,PVST+とRapid PVST+,STPとRapid STPと呼びます。

スパニングツリープロトコルのトポロジー計算は,通信経路を変更する際にいったんポートを通信不可状態(Blocking状態)にしてから複数の状態を遷移して通信可能状態(Forwarding状態)になります。IEEE 802.1Dのスパニングツリーはこの状態遷移においてタイマによる状態遷移を行うため,通信可能となるまでに一定の時間が掛かります。IEEE 802.1wの高速スパニングツリーはこの状態遷移でタイマによる待ち時間を省略して高速な状態遷移を行うことで,トポロジー変更によって通信が途絶える時間を最小限にします。

なお,マルチプルスパニングツリーはIEEE802.1sとして規格化されたもので,状態遷移の時間はIEEE802.1wと同等です。それぞれのプロトコルの状態遷移とそれに必要な時間を以下に示します。

表21‒3 PVST+,STP(シングルスパニングツリー)の状態遷移

状態

状態の概要

次の状態への遷移

Disable

ポートが使用できない状態です。使用可能となるとすぐにBlockingに遷移します。

Blocking

通信不可の状態で,MACアドレス学習も行いません。リンクアップ直後またはトポロジーが安定してBlockingになるポートもこの状態になります。

20秒(変更可能)またはBPDUを受信

Listening

通信不可の状態で,MACアドレス学習も行いません。該当ポートがLearningになる前に,トポロジーが安定するまで待つ期間です。

15秒(変更可能)

Learning

通信不可の状態です。しかし,MACアドレス学習は行います。該当ポートがForwardingになる前に,事前にMACアドレス学習を行う期間です。

15秒(変更可能)

Forwarding

通信可能の状態です。トポロジーが安定した状態です。

(凡例)−:該当なし

表21‒4 Rapid PVST+,Rapid STP(シングルスパニングツリー)の状態遷移

状態

状態の概要

次の状態への遷移

Disable

ポートが使用できない状態です。使用可能となるとすぐにDiscardingに遷移します。

Discarding

通信不可の状態で,MACアドレス学習も行いません。該当ポートがLearningになる前に,トポロジーが安定するまで待つ期間です。

省略または15秒(変更可能)

Learning

通信不可の状態です。しかし,MACアドレス学習は行います。該当ポートがForwardingになる前に,事前にMACアドレス学習を行う期間です。

省略または15秒(変更可能)

Forwarding

通信可能の状態です。トポロジーが安定した状態です。

(凡例)−:該当なし

Rapid PVST+,Rapid STPでは,対向装置からのBPDU受信によってDiscardingとLearning状態を省略します。この省略により,高速なトポロジー変更を行います。

高速スパニングツリーを使用する際は,以下の条件に従って設定してください。条件を満たさない場合,Discarding,Learningを省略しないで高速な状態遷移を行わない場合があります。