コラム「エンジニアが語るアラクサラの技術」
 

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第3回  「ネットワークの運用面をサポートするリンクアグリゲーション」

 

前回は、1Gから10G時代への移行にあたり、ネットワークインタフェースをどのように選択すべきか解説しました。
ネットワークの帯域を拡張しようとする場合、さまざまな手法がありますが、そのうちの1つが、「リンクアグリゲーション」を利用した段階的な移行です。この機能は、複数の回線を仮想的に1本に見せる技術です。これにより、帯域幅の小さい回線を複数束ねて1本の太い回線として利用することが可能となります。
「エンジニアが語るアラクサラの技術」第3回では、アラクサラのAXシリーズにおけるリンクアグリゲーションをご紹介します。
今回の語り手は、製品開発本部の鈴木正史です。

 

Q:最近、社内のネットワークの利用率が高くなったので、帯域を拡張したいと考えています。でも、いきなり10Gを入れるのはどうなのか、迷っているのですが…

鈴木:最近ではビデオ会議やIP電話が普及し、インターネットを利用したインタラクティブなコミュニケーションの利用が増加しています。これらはデータ容量が大きく、ネットワーク上でやりとりする上では、十分な帯域を確保した方がよいと思います。ですが、もしも現在のバックボーンが1Gであれば、いきなり回線をその10倍にするのは悩みどころかもしれません。そのような場合には、「リンクアグリゲーション」を利用して、段階的に移行してはいかがでしょうか?

Q:リンクアグリゲーションとは、どのような機能ですか?

鈴木:リンクアグリゲーションは、複数の回線を1本の仮想的な回線に束ねるという機能です。例えば図1のように、1Gbpsの回線が4本あれば、4Gbpsの帯域が確保できます。これを、1本の4Gbps回線として仮想的に見せるようにするのがリンクアグリゲーションです。

リンクアグリゲーション
図1  リンクアグリゲーション

リンクアグリゲーションには、スタティックリンクアグリゲーション とLACP(*1)リンクアグリゲーションの2種類があります。スタティックリンクアグリゲーションは、コンフィグで定義するスタティックなリンクアグリゲーションで、リンクアグリゲーショングループとして定義した回線がリンクアップした時点ですぐに運用を開始します。これに対して、LACPリンクアグリゲーションは、IEEE 802.3adとして標準化されたLACPを用いることにより、隣接装置との整合性を確認することができるため、例えばポートを差し間違えていたといったようなヒューマンエラーがあった場合でも、プロトコルレベルで一本一本正しいリンク先に接続されていることを確認しながら通信を開始するため、誤った接続先へ通信してしまうことがありません。

*1 LACP : Link Aggregation Control Protocol

リンクアグリゲーションを利用するメリットの1つは、「自分に必要な帯域を確保できる」ことです。10Gbpsまでは必要ないが1Gbpsだけでは足りないという状況は、よくあると思います。希望する帯域に自由にまとめられる、そうした柔軟なネットワーク設計を実現できるわけです。
2つ目のメリットは、回線が複数あることで、たとえある回線に障害が発生した場合でも、他の回線が正常であれば、その回線を用いて通信を継続できることです。「回線の冗長化」ですね。最近では、スロット(NIF:ネットワークインタフェースボード)を跨ったリンクアグリゲーション(図2)も可能なので、回線だけではなくNIF障害時にも通信を継続できる製品が増えています。

スロット(NIF)を越えたリンクアグリゲーション
図2  スロット(NIF)を越えたリンクアグリゲーション

Q:なるほど。複数の回線を束ねることで、計画的に1Gから10Gへの移行をスムーズに 行えそうですね。ですが、最終的に10Gへ移行するとなった場合、異なる速度の回線でもリンクアグリゲーションすることは可能ですか?

鈴木:はい。標準規格として制定されているわけではありませんので、アラクサラが独自に開発した機能となりますが「異速度リンクアグリゲーション」があります。
例えば、9本の1Gbps回線をリンクアグリゲーションで束ね運用していたネットワークを1本の10Gbps回線に切り替えようとした場合、異なる速度の回線を束ねてリンクアグリゲーションすることができなければ、一旦通信を止めて10Gbps回線へと切り替える必要が出てきます。これでは、提供するサービスは一時的に使えない状態が発生する可能性もあります。ですが、この異速度リンクアグリゲーション機能を使えば、一時的に1Gbps回線と10Gbps回線という異なるインタフェースを同じリンクアグリゲーションのグループに所属させることができます(図3)。このとき10Gbps回線は1Gbps回線として利用されるため、トータルで10Gbpsのリンクアグリゲーションとなりますが、通信を止めることなく、リンクアグリゲーションの設定を解除するだけで、10Gbps回線へ移行することができます。

異速度回線のリンクアグリゲーション
図3  異速度回線のリンクアグリゲーション

Q:なるほど通信を止めることなく 10Gbps回線へスムーズに 移行できそうですね。アラクサラでは他にも何か便利な機能がありますか?

鈴木:はい。アラクサラのAXシリーズでは、このほかにも「離脱ポート数制限」と「スタンバイリンク」という独自機能をサポートしています。
まず「離脱ポート数制限」ですが。この機能は、リンクアグリゲーションした予備経路をもう1つ用意し、障害時には完全に予備経路へと通信を切り替える機能です。例えば、10Gbpsを4本まとめて40Gbpsの帯域を確保している場合、1回線が障害になれば30Gbpsへと帯域が縮小してしまいます。これでは、エンドユーザに対するサービスに大きな影響を与えかねません。そこで、必要帯域を提供できなくなった場合には、用意されている予備経路へ完全に経路を切り替えるという機能です。

Q:エンドユーザへのサービスに大きな影響を与えないよう配慮して…とのことですが?

鈴木:リンクアグリゲーションをした場合、その特性上、いくつかの回線に障害が生じたとしても、最後の1本がダメになるまで頑張ってしまいます。しかし、エンドユーザにとっては帯域が縮小しているわけですから、これは逆にデメリットになってしまう場合もあります。そのような場合にも、エンドユーザにとってデメリットとならないようにと、この離脱ポート数制限のアイディアが生まれました。
この離脱ポート数制限は、相手が他社製品でもLACPをサポートしていれば使用することができます。そして図4のようなネットワークではAで障害が発生した場合だけでなく、Bで障害が発生した場合でも、AXが経路を予備経路に切り替え、障害経路を迂回します。

離脱ポート数制限
図4  離脱ポート数制限

もう一つの「スタンバイリンク」も一定の帯域幅を確保するという意味では離脱ポート数制限と同じで、こちらもユーザの利便性を考えた機能となっています。スタンバイリンクでは1本の回線を予備回線とし、トラブルの発生した回線に代わってグループに参加させます。これにより、常に一定の帯域幅を維持できるのです。

例えば4Gbpsの帯域幅を確保したいという場合、障害に備えて5Gbpsもしくはそれ以上をリンクアグリゲーションすれば良いのですが、「従量課金なので4Gbps以内に抑えたい」という場合や、「隣接のネットワークが4Gbpsなので帯域を制限しておきたい」といった場合などでは、必要以上の回線をリンクアグリゲーションしておくという方法はとれません。そのような時に活用できるのが、このスタンバイリンク機能です。

スタンバイリンク
図5  スタンバイリンク

Q:いずれも利用するユーザの立場を考えた機能なのですね。離脱ポート数制限はアラクサラの独自機能でありながら、相手が他社製品でも可能とのことでしたが、スタンバイリンクも同様なのですね。

鈴木:はい。アラクサラでは、実際のお客様での使用環境を常に意識して、独自機能であってもマルチベンダー製品の混在環境での使用を考慮して開発しています。
今後も、ネットワークの運用面をサポートするために、便利な機能をどんどん開発していきたいと思っています。