事例:株式会社 東京証券取引所様金融

投資者の利便性を飛躍的に向上させる次世代ネットワーク「arrownet」

世界規模で証券取引所間の競争が激化し、金融商品の魅力に加え、ファシリティも重要視されている。各証券取引所は、売買注文の処理速度をミリ秒単位の処理時間で実現しつつある。処理速度の向上にともない、取引所と投資者間での通信の伝送遅延が問題視され始めている。その切り札として東京証券取引所が用意したのが、「コロケーションサービス」だ。コロケーションサービスとそれを支えるネットワークインフラ「arrownet」について、常務取締役・鈴木義伯氏、ITサービス部長・吉田康宏氏、ITサービス部・マネージャー・坂本忍氏に話を聞いた。

常務取締役 最高情報責任者 鈴木義伯氏 / ITサービス部長 吉田康宏氏 / ITサービス部 マネージャー 坂本忍氏

ネットワークインフラとファシリティの充実で取引所としての魅力を高める

はじめに、証券取引所を取り巻く環境についてお聞かせください。

鈴木

証券取引所のグローバル化が進んでおり、世界規模で証券取引所の再編が進んでいます。海外の取引所のビジネスモデルは、従来の少数の証券会社による取引から、不特定多数の投資家による取引へと移行しています。取引の質も変化しており、コンピュータを使った「アルゴリズム取引」による自動注文の普及により、取引の小口化が進んでいます。その動きに対応するため、各取引所は、売買システムの処理性能を高めています。東証でも、グローバルな市場間競争に打ち勝つため、売買システム及びネットワークシステムの刷新や新しいサービスの提供を開始しています。

その新しいサービスは、どのような物でしょうか。

吉田

東証のこれまでの売買システムでは、処理時間に2〜3秒ほどかかっていましたが、次世代売買システム(arrowhead)では売買注文の処理時間が10ミリ秒以下になります。これほど高速になると、これまで問題にされなかった投資者と東証との伝送時間が問題視されるようになります。それを解消するのがコロケーションサービスです。これは東証のデータセンター内に投資者のサーバを設置することで、伝送時間を短縮し、より早い注文処理を実現するサービスです。2009年秋稼動予定の新オプション売買システム(Tdex+システム)からサービスの提供を開始し、2010年1月稼動予定のarrowheadに対象を拡大していく予定です。
投資者は、少しでも早く注文処理が行われることを望んでいます。コロケーションサービスは、そのようなニーズとも合致し、投資者の利便性を大きく向上させることにつながると思います。

鈴木

証券取引所は、上場されている金融商品の魅力に加え、ネットワークインフラやファシリティの充実が求められるようになりました。競争力のない取引所には、投資者が集まりません。arrowheadやarrownetに加え、コロケーションサービスを提供することで、これまで以上に投資者が満足できる環境が整います。それによって、東証は世界と対等に戦える準備ができたと考えています。

従来のサービスとコロケーションサービスの比較

首都機能が麻痺しても稼働する堅牢性を確保

コロケーションサービスを支える「arrownet」の概要を教えてください。

吉田

arrownetは、東証のシステムと投資者をつなぐネットワークです。データ量の大きな変化にも対応できるだけのキャパシティを持っており、コロケーションサービスでも活用されます。

「arrownet」を構築する際、最も重要視された要件は、どのようなものでしたか?

吉田

まずは、利便性です。
例えばコロケーションサービスでは、投資者から見たら、自社のデータセンターを東証内に作るようなイメージになります。投資者には、これまで東証の仕様に合わせてネットワークに接続するようお願いしていましたが、コロケーションサービスを実現させるためには東証が投資者のネットワーク仕様を満足させる必要があります。

坂本

例えば、東証のシステムとしては、投資者間のIPアドレスの重複なども許容する必要も出てきます。そのため、より制限の少ないレイヤ2ネットワークであることが必要だと判断しました。arrownetですでに実装しているレイヤ3 VPNに、今回新しくレイヤ2 VPNを追加し、投資者が柔軟に接続できるようにしています。

吉田

次に堅牢性です。
東証の場合、海外からの投資者も多数います。東京で何かあってもマーケットは継続しなければいけません。そのためにはネットワークの堅牢性は非常に重要だと考えています。その点、arrownetは、非常に優れたネットワークです。たとえ震災などで東京の首都機能が麻痺したとしても、取引を継続できるだけの高い冗長性を備えています。

そのネットワークを支えるハードウェアにアラクサラネットワークス製品を選定した理由をお聞かせください。

吉田

何よりも実績です。すでに東証が構築した現行のネットワーク統合ネットでの実績があり、そこで安定稼働している事実が決め手となっています。
さらに、サポート体制にも魅力を感じました。障害解析なども国内で行えるので、万が一の障害時にも素早く対応*1してもらえると期待しています。
ネットワーク機器の話に限定するわけではないのですが、機器を実際に導入してみて後悔することは少なくありませんでした。しかし、アラクサラを選定したことに関しては、全く後悔していませんね。

坂本

投資者の利便性を確保するためレイヤ2ネットワークを採用したことはご説明した通りですが、スパニングツリープロトコルなどは安定性に疑問が残るため、使いたくないと考えていました。その点、アラクサラ製品は、リング冗長プロトコル*2を実装しており、高速・安定した冗長機能を実現しています。これも選定要因の1つになっていますね。

  • *1 外資系ベンダーの場合、サポートセンターが国内にあっても、開発拠点が海外にあるなど、地理的にも離れていることが多い。アラクサラの場合、サポートセンター/開発拠点ともに国内にあるため、顧客からのフィードバックに対しても、すぐに対応できる「国内完結型」のサポートを提供できる。
  • *2 リング冗長プロトコル:トポロジをリングに限定し、障害処理をシンプルにすることで、障害発生時の切替時間を短縮する技術。「AX6300S/AX6600S/AX6700S」では、リング冗長プロトコルの動作をハードウェアで実現し、処理の高速化を実現している。

最後に、今後の予定なども教えてください。

鈴木

arrownetはできたばかりですが、これからの発展が楽しみなネットワークです。今後は、投資者の利便性をさらに向上していきたいと考えています。一例をあげると、アクセスポイントを拡張し、拠点を増やすなど投資者により近い場所に設置することも考えています。また、arrownetは、堅牢性において類を見ないネットワークです。このarrownetには東証のデータだけではなく、さまざまなデータを流すことができます。この特徴を利用し、今後は、証券界の基幹ネットワークインフラに育てていきたいと考えています。

ありがとうございました。

構成図

株式会社東京証券取引所

国内有価証券売買代金シェアの約90%を占める株式会社東京証券取引所。ニューヨーク、ロンドンと並ぶ世界三大証券市場に名を連ねることでも知られる。国内はもとより、世界の経済活動を支えている企業である。