事例:地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院 様病院

VRF機能を使って基幹系と情報系ネットワークを仮想的に統合
シンプルでセキュアなネットワークを実現し、運用も効率化

山形県庄内地方の中核病院である日本海総合病院は、電子カルテのための基幹系ネットワークと事務作業やインターネット閲覧などに利用する情報系ネットワークを、アラクサラのコアスイッチ「AX8616S」のネットワーク・パーティション(VRF)機能を使いセキュリティを確保しながら仮想的に統合。フォールト・トレラント・スイッチによる内部冗長とリンクアグリゲーションにより、シンプルなネットワークを実現した。また、運用管理ツール(AX-NU)を活用することで、ネットワーク内のループを検知し運用も効率化。さらに、SDカードによるコマンドレス保守が可能になったことで、故障時のダウンタイムを短縮している。

地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院 医療情報課 係長 佐々木 邦義 氏 地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院 医療情報課 主事 齊藤 塁 氏

ネットワーク・パーティション(VRF)機能により基幹系と情報系、2つのネットワークを統合

日本海総合病院の概要を教えてください。

佐々木

同じ市内にあった2つの病院(山形県立日本海病院、酒田市立酒田病院)が、診療の効率化のため2008年4月に統合、独立行政法人「山形県・酒田市病院機構」として発足しました。現在、旧日本海病院が急性期の患者さんに特化した「日本海総合病院」、旧市立病院が回復期・慢性期の患者さんを対象とする「日本海総合病院酒田医療センター」として、それぞれの役割を担っています。

当院はかねてより医療サービスとIT環境の強化に向けて積極的に取り組んでおり、2006年度には電子カルテを導入しました。また、2014年度には医療における「マイナンバーカード」を活用した公的個人認証サービスについて国の実証実験に参加しています。

新たなネットワークの構築に至った背景をお聞かせください。

佐々木

既存の環境では、電子カルテ用の基幹系ネットワークと事務処理やインターネット閲覧などに利用する情報系ネットワークそれぞれにコアスイッチがあり、別個のネットワークを構成していました。そのためネットワークが複雑化してしまい、運用負荷やコストの増大が問題になっていたのです。そこでネットワーク・パーティション(VRF)(※1)機能を使って基幹系と情報系を仮想的に統合し、ネットワークをシンプルにできないかと考えました。

また、当時の情報系ネットワークは各部署が独自に拡張を繰り返したせいでブラックボックス化が進んでおり、システムを預かる医療情報課でも把握していない部分が存在していました。結果、品質や性能もバラバラの野良ハブが乱立することになり、ループや遅延がしばしば発生していたのです。そこで、既存スイッチの老朽化を機にネットワーク全体の見直しを検討することにしました。

1台の筐体に2台分の装置を備えた「AX8616S」で障害発生ポイントの少ない冗長構成を実現

コアスイッチにアラクサラのAX8616Sを採用した理由をお聞かせください。

佐々木

VRF機能によって、シンプルで安定したネットワークが構成できると考えたからです。これまで通りのやり方では、基幹系と情報系それぞれにスイッチを用意するため、バックアップまで考えると4台のスイッチとスペースが必要になります。一方、AX8616S のVRF機能を使えば、1台のスイッチで仮想 的に2つのネットワークが構築できますから、コストとスペースの削減が可能です。また、AX8616Sはスイッチ内部で冗長化できるフォールト・トレラント・スイッチ(※2)ですから、複雑さを排除した障害発生ポイントの少ない冗長構成が実現できると判断しました。

VRFやVLANについてのセキュリティ性を懸念する方も少なくありませんが、その点には不安はありませんでした。というのも、当院では2010年に増築した南棟と酒田医療センターで既にアラクサラのスイッチを採用しており、VLAN(※3)で仮想ネットワークを運用してきた実績があったからです。そこで、故障もなく安定稼働の実績があるアラクサラのスイッチで、病院のネットワーク全体を統合するのが賢明だろうと判断しました。

齊藤

運用面から言うと、フロアスイッチであるAX2530SがSDカード1枚で保守できる点を評価しました。これまでは、スイッチを交換する際には新しいスイッチにコンフィグを設定する必要があったのですが、アラクサラのスイッチは設置後にコンフィグを組み込んだSDカードを挿し込むだけでリストアできるので、作業者のスキルに依存せず、ダウンタイムも最小限で済むというメリットがあります。

L2ループ検知機能と運用管理ツール(AX-NU)を用いてループを可視化

導入の流れをお聞かせください。

佐々木

2016年の夏に検討を開始し、秋にはアラクサラにAX8616Sのデモを依頼。ここでの評価をもとに採用を決めました。2017年1月よりネットワークの構築に入り、3月に切り替えています。

その際に何か苦労などありましたか。

齊藤

既存の情報系ネットワークには、把握していなかった野良ハブが多数あったり、配線が複雑に入り組んでいたりで、それらを調査・整理する作業が大変でした。とはいえ、協力企業の支援などもあって、2カ月という短期間で新しいネットワークに切り替えることができました。

新たなネットワークの構成についてお聞かせください。

佐々木

内部冗長構成をとったコアスイッチ(AX8616S)を本館に置き、大容量データの流れるサーバスイッチ(7台)と放射線科のフロアスイッチ(1台)間は10Gのリンクアグリゲーション(※4)で接続しています。東西棟と南棟のフロアスイッチ(AX2530S)間は1Gのネットワークをリンクアグリゲーションで2本束ねて接続し、2Gの広帯域を確保しつつシンプルなネットワークを実現しています。

齊藤

運用を効率化するため、運用管理ツール(AX-NU)を活用してL2ループの検知を可視化。ループが発生した際に通知するとともに、該当するポートを自動で即時シャットダウンすることで障害の拡大を防いでいます。また、発生箇所をツールの画面にアイコンで表示させ、ループの起こった箇所を瞬時に特定しリカバリーできるようにしています。

ネットワーク構成イメージ
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SDカードによるコマンドレス保守で代替機の迅速な設置を実現

導入の効果についてお聞かせください。

佐々木

VRF機能を使って1台の筐体に基幹系と情報系のネットワークを仮想的に統合したことで、シンプルな構成が実現しました。また、画像など大容量ファイルを扱うことが多い放射線科のスイッチを10G、基幹系と情報系を1Gとしたことで、ネットワークの高速化も実現しています。中でも情報系のネットワークはフロアスイッチの高速化に加え、性能のボトルネックとなっていた野良ハブの撤去により大幅にレスポンスが向上。医師や職員からも快適になったという声が上がっています。

齊藤

運用の効率化についても期待通りの結果が出ています。まず、ループ検知機能と運用管理ツールの利用により、ループ障害が局所化されました。これまではループが発生すると、人海戦術でフロアスイッチやその先の回線を調べ、かなりの時間をかけて場所を特定していましたが、現在は5分〜10分で特定しリカバリーできるようになっています。

また、SDカードによるコマンドレス保守により、スイッチが故障したときの対応も楽になりました。以前は、故障時のダウンタイムは1時間〜2時間ほどかかっていましたが、今では30分以内に短縮されています。特に外来病棟の場合、ネットワークの停止は医療サービスに大きな影響を及ぼしますので、これは大きなメリットです。

佐々木

ネットワークがシンプル化したことで、管理するスイッチやハブ、ネットワークの数も減り、私たち医療情報課の負荷も大きく軽減されました。また、障害対応などに無駄な時間を取られることがなくなり、システムやネットワークの企画・検討にリソースを割けるようになったのも大きなメリットです。

今後の展望とアラクサラに対する期待についてお聞かせください。

齊藤

2018年4月に3つの診療所が当機構に参入する予定となっており、現在のネットワークに統合することを考えています。加えて、酒田市内のクリニックや療養型の病院、老健施設などと、電子カルテや患者番号の共有化を進める計画が進んでいますので、その作業に注力していければと思います。

佐々木

そうした意味でも、アラクサラには引き続き支援をいただきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

ありがとうございました。

フォールト・トレラント・スイッチ AX8616S

*1
ネットワーク・パーティション(VRF):1台のスイッチの中に複数のルーティングテーブルを持たせることによって、仮想的に複数のスイッチとして動作させる機能。
*2
フォールト・トレラント・スイッチ:スイッチ1台に2台分の装置を実装し、物理的/論理的なシンプルさを実現したスイッチ。
*3
VLAN:スイッチ内部でLANセグメントを論理的に分割する技術。
*4
リンクアグリゲーション:複数の回線を仮想的に1本の回線にまとめることで、通信速度や耐障害性を高める技術。
社名/商品名は、各社の商標または登録商標です。

About 地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院

地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院

庄内地域における3次救急・専門医療を担う急性期病院。一般病床642床、感染症病床4床を有する。山形県災害拠点病院やがん診療連携拠点病院などに指定されており、2011年には救命救急センター、2012年にはPETセンターを開設。地域の基幹病院として安心、信頼、高度な医療を提供している。