事例:朝日放送株式会社 様 (2017年2月)放送

番組制作のファイルベース化と4K/8K放送の開始によるネットワークの大容量化に対応するため
100G対応のAX8616Sをコアスイッチに採用しネットワークを刷新

関西準キー局の朝日放送株式会社(ABC)は、2008年からネットワークのコアスイッチにアラクサラ製品を採用し、2台の冗長構成で運用していたが、番組制作における放送用テープからファイルベースへの移行、4K / 8K放送の開始などによるネットワークの大容量化を見据え、ハードウェアの更新を機にアラクサラのハイエンドコアスイッチ「AX8616S」へリプレースした。これにより、放送ライブラリーのファイル化にも対応できるようになり、将来8K化された際のネットワーク拡張も可能となった。また、ネットワークの構成がシンプルになったため、管理負荷の軽減も実現している。

総合情報処理センター センター長 教授 佐藤 研一 氏

ネットワークの大容量化を見据えコアスイッチをリプレース

ABCの事業概要を教えてください。

税所

テレビ朝日系(ANN系列)の準キー局として、「探偵ナイトスクープ」「M-1グランプリ」「新婚さんいらっしゃい」などテレビ番組の制作を手がけています。中でも夏の高校野球中継はビッグイベントで、テレビやラジオによる中継はもちろん、より多くの視聴者に楽しんでいただけるようインターネットでライブ配信も行っています。

AX8616Sを導入するに至った背景をお聞かせください。

税所

直接のきっかけはコアスイッチの更新です。2008年4月に現社屋へ移転する際、アラクサラのAX6708Sをコアスイッチ、AX2430Sをエッジスイッチに導入。高校野球やお天気、字幕放送などのデータをやりとりする開発系ネットワークを構築しました。それから8年たって保守切れを迎えることから、リプレースすることになったのです。

リプレースを検討する際にポイントとなったのが、ネットワークの大容量化への対応です。かつて放送局が番組を制作する際は放送用のテープを使うことが主流でしたが、ここ数年でテープからファイル(デジタルデータ)への移行が急速 に進んでいます。ABCでも一部でファイルベース化を済ませており、過去のデータが蓄積されたライブラリーについても2016年度末からファイルベースへ移行する予定です。さらに、今後は放送が現在の2Kから4K/8Kへとシフトしていくと思われ、こうなるとネットワークでやりとりされるデータの量は格段に増大することが予想されます。そこで私たちは大容量に耐え得るネットワークが必要と考えました。

8年の運用でも故障しない安定性と今後10年間使える拡張性を評価しAX8616Sを採用

アラクサラ製品を再び採用された理由についてお聞かせください。

税所

放送局のネットワークを担う機器ですから、特に安定性を重視しました。そういう意味では、2008年の導入以来、8年間で一度も故障しなかったアラクサラ製品には抜群の信頼感がありました。今回の検討にあたっては、国内外の製品を比較しましたが、アラクサラは安定性で突出していましたね。

コアスイッチにAX8616Sを選んだ理由は、スペックの高さと今後10年間は使える拡張性にありました。社内のライブラリーがファイルベースに移行すると、今までの数十倍のトラフィックが見込まれます。また、放送の4K/8K化が進めばさらに帯域が圧迫されるでしょうから、それだけのトラフィックを処理できるスペックがあり、100Gのネットワークにも対応。ポート収容数も多い(192ポート)点を評価しました。

加えて、コアスイッチ1台を複数の論理ネットワークに分けられるVRF(※1)の機能も魅力的でした。これがあれば、番組のファイル流通用ネットワークと、それ以外の天気予報や各種速報、ライブラリー用のネットワークと、複数に分割して利用できますので。

検討から導入、稼働までの流れをお聞かせください。

小南

2015年6月から検討を開始。10月にRFPを作成してベンダーに提案を依頼し、選考を経て2016年4月にAX8616Sの採用を決定しました。6月に筐体が納入され、9月に切り替え作業が完了。新しいコアスイッチによる運用を開始しています。ただし、動いているネットワークは止めることができないので、新旧のコアスイッチを並行稼働させながら、機能を検証したり、コンフィグの設定を行ったりしました。なおエッジスイッチに関しては、40台を一気にAX2530Sへ切り替えています。

若手メンバー主体でプロジェクトを推進ネットワークに関するノウハウを蓄積

ネットワーク構築のポイントはどこにありましたか。

既存の2台のコアスイッチによる冗長化を、フォールト・トレラント・アーキテクチャ(※2)を採用した1台のAX8616Sによる冗長化へと刷新したことにあります。さらに、コアスイッチとディストリビューションスイッチ、エッジスイッチの間はすべてリンクアグリゲーション(※3)で接続。2倍の帯域を確保し、構成もシンプルにしました。

今回、AX8616Sは2台導入していますが、1台はコアスイッチとして、もう1台はディストリビューションスイッチとして活用しています。
ディストリビューションにAX8616Sを採用したのは、より多くの収容ポートを確保するためです。コアスイッチとの間は4本の10Gを束ねて40Gで運用していますが、4本の空きが確保されているので、80Gまでは対応が可能です。仮にこれ以上のトラフィックが必要になった場合は、40Gまたは100GのNIFで対応する予定です。

税所

今回のプロジェクトには、ネットワークの更新と並んで1つ大きな目的がありました。それは放送設備のIP化に備え、新たにネットワーク技術者を育成するというものです。そこで、ネットワークの基本設計、コンフィグの設定、切り替え、工事図面の作成などは技術局開発部の若手メンバーが主体となって行っています。

私の場合、別部署にいたのでネットワークの構築や設定の経験はなく、今回のプロジェクトで初めて勉強することになりました。最初は緊張しながら運用していましたが、自分で設定を行ってからは自信を持って対応できるようになりました。

小南

私もネットワークの構築は初めての経験でしたが、並行稼働の期間に各種機能をいろいろと試すことでノウハウを蓄積できました。国内ベンダーのアラクサラの場合、ドキュメントが日本語で書かれているので、新しいコマンドや製品によるコンフィグの細かな違いなども簡単に調べることができ、非常に助かりました。

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ネットワーク構成のシンプル化により管理負荷が軽減

新しいネットワークの構成についてお聞かせください。

小南

コアスイッチとディストリビューションスイッチを介してエッジスイッチと接続しています。エッジスイッチは、高校野球、天気情報、字幕情報、選挙情報、各スタジオのイベント情報などのシステムにつながっており、一部はファイアウォールを通して社内ネットワークやインターネットにアクセスしています。

導入で得られたメリットなどについてお聞かせください。

税所

リンクアグリゲーションによってネットワーク構成がシンプルになり、管理の負荷が軽減されました。大容量化に耐え得るネットワークが構築できたことで、今後10年は安心して運用できると確信しています。

小南

特番などで急きょ新たなネットワークが必要になり、ネットワークセグメントを追加する際にも柔軟・迅速に対応できるようになりました。

今後の展望とアラクサラに対する期待についてお聞かせください。

現在、セキュリティ対策として統合脅威管理製品(UTM)や次世代ファイアウォールの導入を検討しています。スクリプト言語(Python)の実行環境を持つアラクサラには、これらと連携したサービスの展開に期待しています。

もう1つは映像伝送のIP化です。例えば、4K放送を1本のネットワークを使い非圧縮で伝送しようとすると12Gのネットワークが必要になります。現状ではそれを圧縮して送信することが普通ですが、IPネットワークを使って12Gのまま非圧縮で伝送できればリアルタイム性も高まるなどのメリットが得られると思いますので、こうした面でもご協力いただけると幸いです。

ありがとうございました。

*1
VRF:1台のスイッチの中に複数のルーティングテーブルを持たせることによって、仮想的に複数のスイッチとして動作させる機能。
*2
フォールト・トレラント・アーキテクチャ:障害発生時に最小限の切替時間で運転を継続するための仕組み。
*3
リンクアグリゲーション:複数の回線を仮想的に1本の回線とすることで、通信速度や耐障害性を高める技術。

About 朝日放送株式会社(ABC)

朝日放送株式会社

テレビ朝日系列のABCテレビと、AMのABCラジオを兼営する放送局として番組制作を行っている。朝日放送グループとしては放送事業のほか、ハウジング事業とゴルフ事業を展開。「変化に対応しながら進化を 続け、強力な創造集団として、社会の発展に寄与する」を経営理念に、創立70周年を迎える2021年度に向けて連結売上高1,000億円を目指している。